ECO INTERVIEW
vol.2

ビジネスをスケールして導く
エシカルな社会

エシカルディレクター 坂口真生さん

TEIMEN HISTORY

帝人フロンティアがリサイクルポリエステル繊維「ECOPET」の販売を開始したのは1995年。以来、25年にわたり「ECOPET」で暮らしを豊かにしながら環境問題の解決に向け積極的に取り組んできました。それぞれの立場で環境問題に取り組むために、わたしたち個人はどのようなことから始めたら良いのでしょうか。ECO INTERVIEWでは、ゲストをお呼びしてそれぞれの観点からこれからの社会のあり方について考えていきます。

今回のゲストはファッション・ライフスタイル業界を主軸としながら、さまざまな垣根を超えて事業をつなげ、拡げているエシカルディレクターの坂口真生さん。エシカル事業部としての課題やビジネス目線での社会のエシカルに対する動きなどについて伺いました。

ECO INTERVIEW| MAO SAKAGUCHI01

「rooms」から広がる、
エシカル事業

TEIMEN HISTORY

アッシュ・ペー・フランスが主催するトレードショーroomsで「エシカルエリア」の拡大が話題を呼んでいます。まず、roomsについて教えてください。

クリエイターと社会を繋ぐことを目的として2000年にスタートしたトレードショーです。2021年春に42回目を迎えるのですが、毎年2回、ファッションを中心に、アートやフードなどさまざまなジャンルから毎回3〜400ブランドが一同に介します。

その中で「エシカルエリア」はどのように成長してきたのでしょうか。

僕がroomsプロジェクトチームに入ったのは2012年です。それまで新規事業の立ち上げを多く行っていたので、roomsでも何か新しいコンセプトを立ち上げたいと考えていました。一冊の本をきっかけに「エシカル」に出会い、これからの社会活動の根底となるべき考えに強く傾倒していきました。roomsでのエリアがスタートした当時はまだ小規模でしたが、来場してくれた企業の社長クラスの方々に口を揃えてこれからはコレだとおっしゃって頂き、自分達の進む方向を確信しました。徐々に出展数が増えていき、2019年2月のrooms38での出展数は30ブランド、次回のrooms 39で60ブランド、2020年2月のrooms 40では120ブランドと、この1.5年で倍々に拡大しました。

出展者はどのようなブランドなのでしょうか?

テーマは衣食住です。森や資源の再生事業から、コスメ、食品、アパレル、工芸品、漢方や植物療法などさまざまです。全てリサイクルやアップサイクルを始め環境負荷の低い生産工程を用いていたり、オーガニック、フェアトレード、発展途上国や女性の雇用を支えたり、地方創生に取り組むなどのエシカル(倫理的)な理念を持つブランドです。気鋭の若手アーティストの展示やプレゼンテーションも行っています。

トークイベントなどにも力を入れていらっしゃいます。

ニュージーランドで暮らしながらオーガニックな生き方を提唱する四角大輔氏や、ホリスティック・ビューティ協会の岸紅子氏、SDGs号をいち早く手がけた雑誌「FRaU」編集長の関 龍彦氏など幅広い業界で活躍する方々を企画に招き入れています。フロア構築の企画運営やアワードを設立して紹介の場を増やすなど、個人や小規模なブランドにとっても有意義なコンテンツを提案しています。

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競合ブランドが多そうですが、どのような気配りをしていますか?

目玉となる企画と相性の良さそうなブランドを多く誘致したり、発展性のありそうなブランド同士を近くに配置したりています。roomsをきっかけに新しいビジネスやコミュニティが生まれるよういつも考えているんです。前回のroomsでは、来場者も出展者も一緒になって盛り上がっているブースがいくつも見受けられ、百貨店からの来場者が驚いていました。そこで店舗ビジネスの答えのひとつを見た気がしました。いま、商業施設にテナントが入らず苦しんでいる状況がありますが、店舗同士のコミュニケーションがないからお客さんが入らないのかもしれない。それを根本的に改善すれば、フロアや施設ごと盛り上がっていくんじゃないだろうか、と。

共創しながら拡げていく。今後のビジネス発展の鍵と言えそうですね。

「エシカル消費」(人や社会や地球に優しい消費活動)において、シェアリングエコノミーは基本的かつ本質的な要素です。無駄なエネルギーを省いて環境負荷の低い経済活動が行えるので、民泊サービスを始めさまざまなマッチングサービスが台頭しています。シェアオフィスも同様で、場所を共有してスキルや知識をシェアしたり、出会いのきっかけにもなる。私は5年以上前からいくつかのシェアオフィスを利用しています。

TEIMEN HISTORY

今回、取材させていただいたEAT PLAY WORKSでも取り組みをされているとか。

このEAT PLAY WORKS広尾は20年7月にオープンしました。飲食を中心に新しい空間作りを提案するSalt Groupの新形態事業で、階下のレストランフロアではミシュランを獲得する店舗が多く出店しています。心地良いラウンジや会議室・固定オフィスなどのシェアオフィス設備が整いながら、メディテーションルームがあるのが特徴的です。会員はいつでもメディテーション・プログラムに参加することができます。ビジネスに欠かせないマインドフルネスを空間に組み込んでいるのが新しい。今後のサステナブルビジネスの新拠点を目指して、僕もブランディングを提案したいと思っています。

ECO INTERVIEW| MAO SAKAGUCHI02

環境問題に対して
ファッション界ができること

TEIMEN HISTORY

COVID-19以降、エシカル視点でどのような変化を感じましたか?

ビジネス的な提案を見直すと、必要性やスピード感が明確になったというだけで、ほとんどやるべきことは変わっていないんです。大きなうねりはもっと大きくないといけないですし、企業や大きな組織ではあまり変わっていないのも事実。僕らもスピードを上げることが求められています。
業界の垣根を超えたチームを僕がつなげていくことで、よりスピーディに問題解決やサステナブル化につなげていく。それによって、社会全体を底上げできたらと考えています。サステナブルな社会では、コンペティションではなくこれからはCO-クリエイションをして行くこと。それが、企業の発展に欠かせないのではないかと僕は考えています。

帝人ではプラスチックを再生した繊維「エコペット」に25年以上取り組んでいます。再生素材の今後についてどのように期待しますか?

世界的なサステナビリティの主流はリデュースです。しかし、ビジネスを縮小させることなく環境負荷は減らさないといけないという使命の下、企業の選択肢としてリプレイスが生産背景において大きな部分を占めています。再生繊維の需要はもっと増えていくでしょうし、開発のスピードや多様なリプレイス用途がさらに求められていきますよね。

ファッション企業の環境対策。どのようなことを求めますか?

大きな企業ほど、声を出して欲しいです。その発言の影響力の強さを利用して社会へインパクトを与えて欲しい。マイナス面を言うのも今は良いことなんです。トレーサビリティを明確にして、とにかくできることから前進する姿勢を大手が見せると、信頼が増え社会全体の士気が上がります。例えばファストファッションの大手H&M。賛否両論ありますが、彼らは実際SDGsにかなり力を入れています。(店舗の自然エネルギー化、サステナブルコットンの大幅採用、海洋プラスチックを再生したポリエステル採用、製造工程で水を浄化するサンダルほかクライメット・ポジティブ政策を講じている)実際バングラディッシュで何万人もの従業員の雇用を生んでいるのは事実ですし、COVID-19の打撃下において、期限付きですが従業員の雇用を確保するというアライアンスを打ち立てたのは評価に値します。ファストファッションだと言って簡単に排除すると、急なリプレイスメントにより逆にエシカルでなくなることも多い。進む道筋を明確にして、企業を支える人たちの生活も守りながらやるのが本当のSDGsだと思うんです。そして、サステナブルにはテクノロジーが非常に重要です。新しい雇用やニーズを生み出し、エネルギーや利益を環境改善のためにリプレイスを生むようになって欲しいなと思います。

ECO INTERVIEW| MAO SAKAGUCHI03

エシカルな社会の基盤を作るために

TEIMEN HISTORY

消費者ができることは何でしょうか?

まずエシカル消費者としての目線を持つこと。社会や環境を考えた経済活動を当たり前にすることが大切ですよね。今は、一人ひとりがメディアの時代ですので、良いものや考えをシェアしていくことも、社会を動かす重要な一歩になると思います。
年齢層や情報量によって格差が出てしまうのも課題のひとつです。気づいているけれどどうしたらいいかがわからないという人は結構多いので、社会問題を自分事にして実際の行動に移すためのことを筋トレのように教えてあげるのもミッションだなと感じています。今年からSDGs教育が小学校、来年中学校ととり行われていくことで、子供から大人たちへの影響力にも期待しています。

エシカル消費者が増加すれば社会や企業が変わりますね

企業は、明日・1年後と3年後の早急な経営改善と同時に、次の世代の子供達の暮らしを考えに入れていかないといけない。現在、そこがものすごく乖離しているんですよね。インディアンのセブンスジェネレーションの考え方(行動は7世代先まで影響があるという教え)と同じように、先の世代を鑑みてビジネスを考えていくことが本当の倫理です。

今注目しているブランドや取り組みがあったら教えていただけますか?

服飾・アクセサリー系でいうとMOTHER HOUSEやCLOUDYは途上国を応援していて素晴らしい。また社会問題を解決する事業主をグループ企業化しサポートすることでよりよい社会を広げていくBORDERLESS JAPANはその仕組み自体が革新的ですよね。繊維系ではクモ糸繊維Spiberにも注目しています。それから、上勝町のゼロ・ウェイスト・ジャパンのような取り組みは、今後必須になってくるでしょう。同時に、新しい世代が作り上げる組織が楽しみです。ペットボトルの使用を減らすための給水アプリmymizu、サステナブルなブランドを集めたEnter the Eをはじめ、若い起業家がソーシャルビジネスをどんどん進めています。

TEIMEN HISTORY

今後の取り組みについてお聞かせください。

今年の3月、エシカルコンビニを新宿ルミネで行いました。資本主義社会の象徴とも言えるコンビニをサステナブルな商品で埋め尽くしたんです。とても好評でしたので、さらなる事業展開を視野に入れています。
アッシュ・ペー・フランスがずっとやってきたことは、アーティストやデザイナー、クリエイターの作品を紹介して、店舗で対価に変えていくということ。このコンセプトは僕が手がけるエシカルというジャンルでも変わりはありません。僕にとって、サスティナブルブランドはクリエイターなんです。店舗を通して世の中に紹介することで、企業や百貨店、ひいては世の中が変わっていけばいい。そのために、これまでやってきたことや繋がりを生かして、どんどん社会を良い方向に変えていきたいですね。

PROFILE

坂口真生(Mao Sakaguchi)
アッシュ・ペー・フランス エシカル事業部部長。ファッションの合同展示会「rooms」において日本初となるエシカルエリアを発足。多角的にエシカル/サステイナブルブランディングを提案している。毎週土曜18時からJ-WAVE「ETHICAL WAVE」ナビゲーターとしてラジオに出演中

ECO INTERVIEW
vol.1

森から発信するこれからの暮らし

岡部文彦さん

TEIMEN HISTORY

さまざまな変化によって人々の感覚が変わり、働き方やものの見方・暮らし方が見直されています。人間にとっての利便性が向上し続ける一方で、環境破壊のスピードはなかなか衰えません。帝人フロンティアがリサイクルポリエステル繊維「ECOPET」の販売を開始したのは1995年。以来、25年にわたり「ECOPET」で暮らしを豊かにしながら環境問題の解決に向け積極的に取り組んできました。環境問題に取り組むために、わたしたち個人はどのようなことから始めたら良いのでしょうか。ここでは、より良い地球環境を願って活動を行う方々へのインタビューを通して、環境問題への取り組みと暮らしのあり方を考えていきます。
初回は、外遊び研究所(SOTOKEN)主宰としてアウトドアの楽しみ方を提案してきたスタイリストの岡部文彦さん。今年3月に岩手へ居を移しスタートした新生活について、自然環境にまつわるあれこれや、これからのエコな暮らしのビジョンなど幅広くお話を伺いました。

ECO INTERVIEW| FUMIHIKO OKABE01

民藝に導かれた
自分らしい山ぐらし

TEIMEN HISTORY

東京で長年スタイリストとして活躍しながら、外遊び研究を続けてこられました。ついに3ヶ月前に岩手に移住されましたが、現在の活動とそのきっかけについてお聞かください。

今、地域おこし協力隊として岩手の岩泉町で林業を学んでいます。チェーンソーを扱う技術の研修を受けたり、刈払機という機械を扱うための資格や、林業に必要な作業道づくりに使う掘削用建設機器の資格を取るための勉強をしているところです。山に土地を買って整地して小屋を建てて自給自足をする、といったオフグリット的な“現代的な原始的生活”に憧れを持っていて、林業を学ぶことによって100%とまではいかなくても半分とか何%でもそういった暮らしをしたい、と40を過ぎてから強く思うようになったんです。昔の人たちとか日本の昔話に出てくるような、お爺ちゃんお婆ちゃんが味わっていた昔ならではの暮らし、が実は一番理想なんじゃないのかなって思ったんです。 日本の民藝が提唱した柳宗悦のように、日本の暮らしにまつわる美しい道具や物、器のような“用の美”を知った時に日本にも良い物がある。ファッションスタイリストとしてアウトドアファッションとの壁に衝突していた時、”機能美”的なものを積極的に取り入れるのがアウトドアウエアっていうことに気づいた。そこと民藝がくっついたんですよね。ある日突然(笑)。

ファッションと暮らしにおける“機能美”という接点を見いだしたんですね。しかし”自給自足的”な世界は哲学的になりがちでちょっと立ち入り難い印象もあります。

林業の学びを始めてみて、改めて自分もそうなりかけているところもありますが、あんまりやりすぎると絶対、暮らしが楽しくならないから。自分が絶対大切にしていきたいのは“暮らし”なんです。サラリーマンで高給取りになるのもいいですけれど僕が目指したいちょうど良い部分というのは、自分自身で身体を動かして伐った木を使って何か作るか?とか、そういう現場の声の方がリアルで大事なんですよね。親が認知症になってしまったというのもありました。団塊世代でバリバリ仕事をしていた世代が定年退職後に認知症になってしまって家で引きこもっているのが友人の家族を含めて圧倒的に多い。その点、山暮らしをしているお爺ちゃん、お婆ちゃんって90歳過ぎてもいまだに元気にやっている方も多いですから。テレビとかポツンと部屋で見ているより、絶対体を動かした方がいいんだろうなって。だから、20年間以上属したファッションの世界で学んだ美やアート的感覚をミックスして、自分らしい山暮らしができたらなと考えています。山を整地にしたり、空き家を少しずつリフォームして、”衣服のスタイリング”から”山暮らしのスタイリング”をやれたらなっていうのは今自分が強く思っていることです。

今年は生活様式が変容してリモートが当たり前になりました。どこにいてもモノや情報がそろうおかげでより自分らしい暮らしを求めて移住する方は増えているようです

これからの生き方って自分たちの親の世代とは違うよねっていう考え方で「お爺ちゃんが守って来た山を俺が守る」みたいな人が僕と同じように東京から移住してきた先輩もいます。とはいえ、地域おこしに協力している人にも役場もさまざまで、人を呼ぶためにいろいろなコンテンツをつけて呼ぶけれど、役場側の希望と来た人の希望が合っていないっていうのが問題になっているというのも聞いたりします。岩泉町は寛大な方ですけど、移住して来た協力隊の行動に対して厳しい市町村もあるようです。

ECO INTERVIEW| FUMIHIKO OKABE02

享受した自然を次世代へつなぐために

TEIMEN HISTORY

人間にとって自然はなくてはならない環境。今後はさらに尊重して共存していかなくてはならない。岡部さんは外遊び研究所を通して気づかされたことも多いのではないでしょうか。

僕は子供の頃に外で遊んだ体験がすごく印象に残っていて、それが一番世の中で楽しい遊びだと思っていたんです。遊びっていう’嗜み’ですよね。遊び倒して来たからこそ自然って偉大だなと改めて実感する。都会にいても隅田川をゴムボートで下ったりして、田舎と同じ感覚で遊びができるということは学んだんです。大雨が降れば川に大水が流れる、水量によっては道路だって壊れてしまう。そういう自然の仕組みも外遊びによって理解できました。
特に分かったのは、6年前から始めた渓流釣り。釣りで山に行くうちに、より人が行かないような危ない所に行くようになりました。山梨県、栃木県、福島県の山々に訪れるうち、山が荒れているということが分かったんですよね。それらはすべて、放置人工林のある山だったり….詳しく調べたわけではないんですが….. 感覚的に感じました。祖父母世代が孫の代のために山に針葉樹を植え、高度経済成長期の子供がそれを受けつがずに放置してしまった林がほとんどのようです。鹿が増え過ぎて害獣扱いをされているところも増えている。さらに、人知れず作られていた砂防ダムは、実は水難被害に関係していると言われていることも知りました。山の奥深くに林道が作られ、えん堤が何機も存在しセメント工場が隣接しているのを見ると、果たしてそれはすべてが必要だったんだろうか?と。ここ最近地球温暖化のためか自然災害が急増していますよね。それって全部リンクしているんじゃないのかなって。そういうことに上流部や源流部に行くことによって、外遊びを通じて気づかされてきたんです。あくまでも感覚的ではありますが、見た上での経験は意外と間違っていない気がします。

TEIMEN HISTORY

当初は、東京近郊に移住して林業に従事して放置人工林を自分が間伐して行けば少しでも山を再生できるんじゃないか、と思っていたりしたのですが、どうしても雪の降る北国に住みたかったんです。広葉樹林がいっぱいある山奥の町に来たことで林業が抱える様々な側面も知りました。

いまや企業の矛盾は見透かされる時代。一人ひとりの意識と行動で、環境は必ず良いものに変えられると信じています。

世の中の人はどういう風に思っているんでしょうね。企業としては、パタゴニア社創業者のイヴォン・シュイナードは自らが動いてリサイクル事業に本気で取り組んでいます。そういうのを見るとグッときますね。今はハイブランドを始めとしてファッションブランドも積極的になっていて、世の中が変わってきているんだなって実感はしています。そこで協力してくれる人とか、今の自分の与えられた立場で実体験を通して想いをSNSなどで伝えることでひとりでもいいから意識が変わってくれたらなって勝手ながらに思っています。現場を視ないと分からないし、住んでみなければ分からないことはいっぱいあります。
もし今、移住しようか?どうしようかと悩んでる人がいるのであれば、移住促進のwebサイトもあるし、国が行っているプロジェクトの「地域おこし協力隊」で住みたい移住先を全国で探してみると良いかと思う。実際に住んでみて分かったことは、小さな市町村の町工場で働く人々の高齢化が限界にきている事が解った。伝統工芸もそのうちの重要なひとつの課題にはなっているけれど、製材所的な市町村の町工場でさえ、高齢化が進む一方。大都会で今の暮らしに対して疑問がある人たちがいるのであれば、自分と同じように、地域おこし協力隊などの国の制度も利用すれば、移住もハードルが下がるわけだから、是非活用して全国各地に移り住めば、後々に理想的な暮らしに変えられて、環境も良く変わっていくんじゃないのかな?って思いました。

TEIMEN HISTORY

例えば、このバッグ(写真上)は隣の葛巻町の高齢の方が作った木の皮の編み細工です。このあたりに群生しているウリハダカエデを使っているのですが、こういった樹皮細工と言われる工芸がこの辺りにもまだ残っているというのを来てから知りました。
僕の中では地域の風土に乗っ取った民芸品もファッションと同じことだと思うんです。祖父母の世代の技術を継承するには今がギリギリ。見慣れた地元の人には良さが分からなかったりすることがあるから、移住を検討している方々が新しい目線でこの伝統を担うことで新しいモノも生まれる気がします。インポートモノじゃなくても、流行りの北欧やポートランド発に傾倒しないで、日本の各地の地場産業を、若い世代で引き継いで、新しいものに変えていく、ってことの方が今はとても重要なんじゃないか?って思います。

ECO INTERVIEW| FUMIHIKO OKABE03

言葉ではなく感覚を養う時代へ

TEIMEN HISTORY

生き方を見据えた暮らしをする人が増えてきている現在。学歴至上主義だったこれまでの価値観から教育的概念は今後ますます変化しそうです。

解剖学者の養老孟司さんは、外遊びや虫採りが大好きだったりするらしいんです。虫採りも含めて、解剖学を通じて分かったのは、人間はもっと感覚的じゃないといけないということだ、とおしゃっていたんです。彼の中では「感覚」の反対の意味が「概念」。概念って言葉によって作り上げられるもので、概念を持つということは頭でっかちになるっていうことだと。勉強・知識・メディア・SNSのように、言葉(情報)ばかりで頭を形成しがちだけれど、そんなことより自然体の感覚が大事で、頭でっかちになっていると最終的には地球で生き残れないよって言ってると僕は感じました。人工的でハイテクなモノを作り上げた人間もすごいと思うけれど、その反対側の自然の仕組みってのがどういうことなのか?がものすごく大事だということを教えられたんです。このコロナ時代まさにそうだなと。自然の仕組みをすることだって、外遊びをして見ないとわからない。何事も自分で体感しなきゃ分からないわけです。川で遊ぶことを禁止する理由ももっともだけれど、川で遊ぶから危ないと分かるんですよね。大人が子どもたちを規制しすぎているっていうところも’概念’の考え方かなと。そうすると養老先生が言っていることも全部辻褄があってくるんです。

感覚を活かさなくても簡単に生きられる世の中だからこそ、心に響きます。あえて体感することで、より物事が見えたりバランスを上手にとれるようになるという。

去年カナダに行って、ヒッピー的な人々が住んでいるコルテス島に半月ほど滞在したんです。その島は本当に自然豊かで、家の庭とかにも杉の大木が生えている、そんな環境でした。オフグリッド的な生活をしている友人家族に半月お世話になりました。彼らは地球環境に対して当たり前のように強く考えている人達だったから、そこに行った事も移住の大きなきっかけのひとつ。彼らは、衣服でもポリエステルでも、ビニールでもなんでも、使い切れるまで使ってから、やっと捨てている。あたりまえだけど、物を大切に扱っているんです。さらに、3歳から10歳くらいの男の子も女の子も自然での遊びを優先させてあえて学校に通わせないで家庭で学ぶという”ホームスクール”をしている家庭も多いらしく、8歳ぐらいまでは文章も習わせないとか。英語を学ぶっていうこと自体も’概念’になるから、それを”感覚”にさせるんだな、というのは後々養老氏の本を読んで”ホームスクール”の意味と繋がったことです。

今後、中央経済から分散型になりコミュニティが細分化されると言われるなかで、コミュニケーションのあり方も変わってきそうです。

「人間力が身につけば色んな仕事ができるんじゃないか」というのが自分の考えです。4年制大学に通わなくてもいいから、海外移住でも山暮らしでもなんでもいいから自ら『体感』して欲しいと息子たちには言っています。知識は二の次でいいし、レールに沿った生き方をしなくてもいい。ただ、本当の意味で暮らしを豊かにするには、身体を使って体感し、自分で経験するのが一番。それを、林業の勉強をするようになって山の現場や製材所で樹木に触れ合うなかで、改めて痛感しています。

TEIMEN HISTORY

ゴミや無駄をなくしながら再生可能な資源を活用して経済を回す「サーキュラーエコノミー」も、持続可能な社会の必須項目になると言われています。

徳島県の上勝町をご存知ですか?コルテス島と似ていて、「2020年までにゴミをゼロにする」など平成15年に掲げた『ゼロ・ウェイストを宣言』がうまくいき世界的にも注目をされているらしいんです。ゴミは何十種類に分別するらしいんですが、前町長はそれを徹底したらしいんです。隣の神川町も面白いらしくファッション関係者も結構いっている事を知りました。僕も上勝町を見学しに行って、移住した地域にも伝えられたらいいなと思っています。

ファッションや遊びを通して多くの経験をされてきた岡部さんならではの山暮らしがこれからの理想的なまちづくりにつながってほしいと思います。

まずは、日本国内で各市町村がそれぞれ自給力を少しずつあげて暮らしていき、ないものがあれば、近隣の地域同士でお裾分けや物々交換をする。そんなふうに通じ会える人たち同士の関係人口を増やして、補い合う暮らしって豊かだなと思い始めてきたんです。それを実践して行ってみたいなと。都会でも村の集落でも、似たような想いを持つ人たちが共に各過疎地域を活性化できるような動き(暮らし)が生まれたならいいなと思い始めてきました。とはいえ、まだ暮らし始めたばかりの立場で言い切れることではありません。実際に体感して確かめていきたいと思ってます。暮らしながら。

PROFILE

岡部文彦 Fumihiko Okabe
元ファッションスタイリスト。現在、地域おこし協力隊として未来の暮らしスタイリングを勉強中。アウトドアファッションウエアブランド「Reft」の企画やアウトドアファッションマガジン「GOOUT」で「SOTOKEN」の連載、WEB SHOP「ホームセンターバリカンズ」を運営するなど多岐にわたり活動している。

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