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仕事服の
ニューノーマル

対談

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暮らしのパラダイムシフトが進む中、仕事服はどう変わっていくのか? デザイナー&編集者の目線で語ります。

ここ5年で、スーツの常識は一変した

小曽根 新しい生活様式が浸透していくなかで、最近よく“ビジネスウェア”という概念の変遷について考えているのですが、振り返ってみるとここ5〜6年ほどで、ビジネススーツのスタンダードは大きく変わりましたよね。最大の変化は、ポリエステルやナイロンなどハイテク素材を使った高機能スーツの隆盛だと思います。

石川 “テーラードウェアは天然素材に限る”という考え方は、もはや過去のものになりましたよね。いまやあらゆるスーツブランドが化学繊維を取り入れていて、“コンフォート”という要素はビジネスウェアにおいても欠かせないものになりました。

小曽根 思えばそんな高機能素材の中でも、最初にメディアを賑わせたのが「ソロテックス」でした。

石川 そうですね。柔軟に伸縮するストレッチ性とシワに強い形態回復性という機能性を持ちながら、肌触りが非常にソフトで、染色したときの発色も美しいのが「ソロテックス」の強み。そんな上質感がファッションブランドの目に留まり、人気を集めたのだと思います。それから“高い調和性”も特色で、ウールやリネンなど天然素材とミックスしても、その風合いを損なわないというのも「ソロテックス」ならではですね。

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小曽根 “ポリエステルなのに上質”という観念は、「ソロテックス」以前にはなかったのではないでしょうか。そう考えると革新的な素材です。

石川 最近はそれに加えて、エコロジー的観点でも評価されています。化学繊維の多くは石油を原料としているのですが、「ソロテックス」は一部に植物性由来の原料を用いているため、環境負荷の低減に繋がっています。

小曽根 ファッション業界では今、“サステナビリティ”も非常に熱いキーワードですもんね。さて、そんな「ソロテックス」をはじめとする高機能素材に焦点をあてて立ち上げられたのがTEIMEN GINZAというわけですが、ここまで機能素材スーツが一般化した今、あえて同分野にファッションブランドとして進出した理由はどこにあるのでしょうか?

石川 ポリエステルという素材の価値をもっと引き上げたかったというのが大きな理由です。化学繊維のスーツは確かに浸透しましたが、まだまだ“実用性優先の服”というイメージが強い。そこで、“本格”、“上質”にとことんこだわったアイテムをご提案すれば、今までにない価値をお客様に提供できますし、結果としてポリエステル素材のイメージもアップするのではないか、という構想です。

小曽根 なるほど。ありそうでなかったジャンルですね。TEIMEN GINZAのスーツは、帝人フロンティアのポリエステル素材を使いつつ、生産は南イタリアのスーツファクトリーが手がけているとか。これも非常に新鮮です。

石川 商品開発にあたって、「ソロテックス」をイタリアのいろいろなファクトリーに持ち込んで、サンプルを作ってもらったんです。その中で一番完成度の高かったところに生産をお願いしました。実力も知名度もあるスーツメーカーの作だけあって、南イタリアらしい立体的な縫製と「ソロテックス」の機能性が融合した、非常にユニークな一着が完成したと思っています。

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小曽根 機能素材のスーツは仕立てもカジュアルというか、簡易的に作るものが大半ですが、ここまで伝統的なテーラリングによるものはとても珍しいですね。これは、コンフォート・ビジネスウェアの新提案として非常に魅力的です。

石川 実は今着ているジャケットは、電車の中が暑かったのでクシャクシャに丸めて手で持っていたんです。でも、気になるシワはないですよね? こういう便利さが、本格スーツの世界でも今後ますます重要になっていくと思いますね。

“便利”と“本格”の両立こそ重要

小曽根 話題を少し変えて、これからのビジネスウェアについてもお話を伺いたく思います。テレワークの浸透によって、スーツに着替えて会社に行くという機会がかなり減っていますが、そうなるとスーツ自体、絶滅の危機にあるのではと懸念する声も聞かれますが……。

石川 確かにスーツを着る機会は減っていくと思いますが、それでも完全に無用のものになるとは思わないですね。ただ、スーツを“制服”的な実用品と捉える層と、より積極的にファッションとして楽しむ層との二極化はますます進むと考えられます。我々としては、後者の方々にどれだけ魅力的なアイテムをご提案できるかが勝負どころですね。

小曽根 なるほど。そのための具体的な案はありますか?

石川 やはり、“単なる仕事着”ではないスーツを作るということでしょうか。TEIMEN GINZAのスーツは、そのあたりも意識してデザインしています。例えばジャケットは伝統的なイタリアの技法をベースにしつつ、あえて“イタリアっぽい艶気”を抑えてクリーンに仕立てています。それから、ウエストのシェイプも緩めに設定して、リラックスした雰囲気もプラスしています。こうすることで、今日の僕のようにカットソーを合わせて休日に街へ出かけることもできますし、オンラインミーティングに参加するときのビジネスカジュアル的な服装にも対応できる。もちろん、ビシッとタイドアップしてもいい。ハイブリッドなデザインにすることで、より様々な場面で着こなしていただけるよう意識していますね。

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小曽根 オンとオフの境界が曖昧になっている今だからこそ、ファッションとしてのスーツは多彩なオケージョンにシームレスな対応ができるものへと進化していくということですね。

石川 そうですね。それから、ファッションとしてスーツを楽しむ方にご満足いただくためには、しっかりとものづくりの背景やストーリーがあるアイテムをご提案しなければならないとも思っています。単に便利なだけのものは、どうしても愛着が沸きにくいものですよね。手に取ったとき、袖を通したときの“わくわく感”はファッションの楽しさの原点ですし、普遍的な価値です。情熱を持ってスーツを楽しみたいと思っているお客様に、心から納得してお求めいただき、満足感を持ってご愛用いただける服を作りたい。TEIMEN GINZAがイタリアのファクトリーとコラボしたり、素材の上質さにこだわっているのはそういった理由もあるのです。今後はTEIMEN GINZAでしか手に入らない限定素材なども登場予定で、もっと“わくわくする”アイテムを展開していきます。

小曽根 本質的・根源的なファッションの魅力をコアにしつつ、新しい時代感覚に合わせた形にアウトプットしていく。とても刺激的な構想だと思います。個人的には、こういった進取的プロジェクトがトラッドの殿堂であるテイジンメンズショップのすぐ上で発信されているという状況が感慨深いですね。

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石川 戦後日本におけるメンズファッションの萌芽といわれるアイビーブームの中で、テイジンメンズショップはひとつの重要な拠点でしたし、テイメンのある銀座はジャパニーズアイビーの中心地でした。当時はネイビーブレザーやサックスーツといった洋服が最高の“お洒落着”とみなされていたわけですが、いつしかそれらは“ビジネスウェア”という位置づけになっていきました。そして今、スーツやジャケットは再び仕事着からファッションとして楽しむ服へと変容しつつあります。日本のスーツ発祥地であるこの銀座という街、そしてトラッドの原点であるテイメンから、新時代のスーツスタイルを発信できるということに誇りを感じていますね。

小曽根 今後も楽しみにしています!

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PROFILE

石川泰三 Taizo ishikawa
日本を代表するデザイナーズブランドや有名セレクトショップで、約30年にわたってメンズウェアの商品企画を担当。現在はTEIMEN GINZAのデザイナーとして、すべてのプロダクトの企画開発に携わっている。

小曽根広光 Hiromitsu Kosone
雑誌『MEN’S EX』副編集長を経てフリーランスの編集者に。専門はドレスクロージング全般とレザーシューズ。年2回イタリアで開催される「ピッティ・ウォモ」にも毎回赴き、世界のバイヤーに取材を行なっている。

THE NEW CLASSIC

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